メンバーコラム
バイクは健康療具
2015-03-23
ゴールドウイング1800で伊勢志摩へ
春の気配を感じて
梅の咲く季節になり、Nakaさん、Kさんと一緒にスクランブラーに乗って、伊勢志摩方面へツーリングに出かけて伊勢神宮へ参拝しようかという計画を立てていた。
丁度その頃、高田さんから、ゴールドウイング1800(以下GL)の試乗車のメンテナンスも終えてコンディションを整えたから、ツーリングで走らせてGL初体験の感想を聞かせてほしい、という依頼がNakaさんとKさんにあった。
NakaさんもKさんも「こんな大きなバイクに乗れるのかな?」と困惑していたが、高田さんからGLの魅力について話を聞き、私も最初はおっかなびっくりでGLに乗り始めたけれど凄く乗り易いから心配いらない、NWJCで拘りのメンテナンスを終えた試乗車は、新車のGLよりも格段に乗り易くなっているから大丈夫など経験談を話している内に、試乗意欲が高まりGLを初体験することになった。
そういう訳で、伊勢志摩ツーリングは、KさんがBMW100GS/PDで参加してNakaさんと交互にGL初体験ツーリングとなった。私もスクランブラーからGLに乗り換えて行くことにした。
GL初体験の2人は、走り始める前は少々緊張した様子に見えたが、走り始めて30分も経たない内に、GLの乗り易さを感じ取り、各部にチェックを入れながら楽しんで走っているようだった。
Nakaさんのブログ: トライアンフ スクランブラーの備忘録『春のGL1800試乗ツーリング』
ゴールドウイングの魅力については、予てよりコラムで伝えているが、初めてGLに乗る2人の姿を見て、私自身の過去を振り返りながら、いろいろと思うところがあった。
ゴールドウイング適齢期
NakaさんKさんが、乗って間も無いにも関わらず、GLを楽しめるのは、今回の車両がNWJC拘りのメンテナンスにより乗り易い(会話し易い)仕様になっていること、2人がトレッキングごっこを続けていてバイクを操る基本(バイクとの会話の仕方)をしっかり身に着けているからだ。
新車のまんまのGLであれば、NWJC南店を出発すると同時に右折となる交差点では、低速で内側にググッと切れ込む動きは巨大なGLの車重を実感して、思わず半クラッチを当てながらエンジン回転を上げてバランスを取ろうとして、苦手意識と言うか不安感と言うか、GLとの心理的な距離が遠くなるような印象を受けるだろう。
しかし、NWJCの試乗車は、エンジンコンディションを整えることから始まり、そういうGLの癖を見事に解消している。
また、トレッキングごっこを楽しんでいる2人のアクセルワークは絶妙で、一般道のワインディングや高速道路の渋滞も、苦にすることなく悠々と走らせており、GLに初めて乗ったとは思えない安定感のある実に見事なライディングだった。
GLを楽しむには適齢期があると高田さんは提唱されているが、これは高田さんの経験からくるものだ。GLは見た目の大きさやスペックとしての重量を気にしなければ乗り易いバイクだ。しかし、40代50代と体力に余裕がある時と、60代に入ってから気力は充実していても体力が衰えはじめてからのGLの楽しみ方はどう変わるだろう。
一般道や峠道などで、数百キロの走行距離をカブ110とスクランブラーで比べて見ると、意外にもカブ110の方が疲れていない事を体験すると、400キロを超える車重は無意識の内に負担となり、単純な高速道が主体となり、GLとの会話は徐々に弾まなくなって行くのではなかろうか。
体力が衰えてからバイクライフの締めくくりとしてGLをはじめ憧れの大型バイクを選ぶ方もいらっしゃると思う。しかし、体力に余裕があるうちでないと、GLなど大型バイクを楽しむ筈が、最初は感動的であっても時間が経つにつれて億劫と成り苦痛に感じることもあるだろう。
体力に余裕があり、バイクを操る基本を身に着けて、ツーリング等である程度経験を積み重ねた上でGLに乗る適齢期(理想)があると私も思う。
永年バイクライフを楽しんで来た年配のベテランライダーは、気負いや衒いよりも、ダウンサイジングによって従来と変わらずバイクライフが楽しめる事を御存知の方が多いように思う。
趣味の制約
バイクに限らず、趣味を愉しむ為には、社会生活・環境上の色々な制約を受けると言われている。社会心理学では、自由時間や余暇時間の使い方について、いろいろと研究されている。
自己の能力(体力、気力、持久力、判断力)であったり、時間であったり、経済面であったり、情報であったり、人の和であったり、職業であったり、私たちの社会における様々な環境因子が、バイクライフの幅を拡げたり狭めたりする。よく考えれば当たり前のことのように思う。
雑誌やWeb等の情報は、こういう制約を考えずに、万人が同じようなバイクライフを送れるような錯覚を引き起こしやすいものが多いように思う。だから、私達ライダー自身は、この制約の中でいろいろな情報を自分にとって正しく有効なものは何か、如何に選び出していくのか、しっかり考えなければならないと思う。
考える際には、経験豊富なバイク屋さんやライダーの話を直に聴くことも大切だと思う。しかし、GL(バイク)に乗らないバイク屋さんの話は、カタログや雑誌、Web情報などの情報を繋ぎ合わせた疑似体験がベースだから、信頼性に欠けると思う。だから、こんなものです・・・という対応になるのではないか、と思う。
限られた休日を如何に活用してツーリングに出かけるか。限られた時間を、如何に有効に使うことが出来るか。限られた予算の中で、どのようにしてバイクを楽しんでいくのか。車両、メンテナンス、装備、旅費の遣り繰りをどうしていくのか。現在の自分自身の、能力に見合ったバイクの楽しみ方を出来るのか。そもそも自分の能力は如何なるレベルなのか。
人生を豊かにするような活動としてバイクを選んだ場合、人間力を発揮しなければ、深くは楽しめないように思う。バイクを楽しむ為の下準備には努力を惜しまない姿勢が大切だと思う。しかし、そこまで深く考えずに只単に楽しい時間を過ごせれば良い、という考え方のライダーも意外に多いようだ。
バイクライフを単に楽しい時を過ごす娯楽として捉えると、その代償は計り知れないものになる場合もある。50代の死亡事故が急増している現実は、どのように解釈すればよいだろうか。
最新のバイクでは、自分の能力を超えたところをアシストするような、電子部品が満載のバイクも増えているが、「乗れている」と勘違いするとどのような結果を招くか、容易に想像が出来ることだと思う。
等身大?
今回の伊勢ツーリングで、高田さんの知り合いのバイク屋T.Kさんがスクランブラーで通り過ぎるのを偶然目にした。T.Kさんは、等身大のバイクライフを提案しておられることもあり、その場でNakaさんとGLの関係において、等身大について話題となったので、少し触れておきたいと思う。
T.Kさんとは東北ツーリングやカブ・コンプリートでのキャンプツーリングでご一緒した際に感じた事だが、T.Kさんの話の内容やツーリングスタイルから、等身大という言葉は、背伸びせずそれなり(・・・・)に楽しくバイクライフを送りましょう、と言う意味では無いかと感じている。(それなり=曖昧=テキトーどの表現が最適なのか?)
しかし、私は乗り始めたころから現在に至るまで25年のバイクライフを通じて、バイクは素敵な乗り物であると同時に、色んな車両で何度も危険な場面に遭遇し体験してきた。先日もカブ・コンプリートで、状況判断が甘く注意力散漫により転倒…、と様々な経験上、楽しさ、怖さ、危険性を少しは知っているから、繊細さや緊張感も無いままに、曖昧に楽しく過ごすのは如何なものかと思う。
日常と非日常という表現をしたことがあるが、趣味のバイクライフは、生活の一部であり、人生に影響を与える要素の一つだと思う。職場を中心とした生活を日常と考えた場合には、ツーリングは非日常だが、自分の人生を考える場合には、趣味は常に生活の旋律の中に溶け込んでいるように思う。
私は、等身大のバイクライフというものは、自分自身の置かれた環境を知った上で、初めて解るものだと思う。バイクライフは十人十色であるが、自分自身のことも考えずに曖昧に過ごすのは、社会人として如何なものかと思う。
バイクライフをテキトーに過ごすのは、人生の一部を曖昧に過ごすことになり、貴重な自由時間の内容が色褪せたものになりはしないかと不安になる。
生涯発達
心理学者で精神分析家のエリクソンさんは、人生の経過についてライフサイクルという考え方を提唱された。そこには、幼児期や思春期など8つの発達段階があり、其々の発達段階には次の段階へ到達する為に身に着けておくべき発達課題と乗り越えるべき危機が存在していると言う。
バイクライフも、高田さんの提唱されている緩やかな放物線を描くように楽しみ続ける経過を辿るのが理想的だと思う。その経過の中には、ライフサイクルと同様の課題や危機が存在しているように思う。
私自身、ライダーとして理想的なバイクライフを送れるように心がけたいと思う。
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