メンバーコラム
バイクは健康療具
2017-08-21
バイクライフを振り返る その1
早いもので、私がバイクに乗り始めてから来年で30年になる。そして現在進行形でバイクライフを満喫中である。しかし私の今までのバイクライフを振り返ってみると、順風満帆ではなく、紆余曲折があった。そういう経験が、これからバイクライフを楽しみたいと考えている方々に、何かしら参考になるようなこともあるのでは?と思ったので、書いてみようと思う。
なぜバイクに乗り続けているのだろう?
私の場合、バイクに乗ることで格好良くなりたい。今の自分とは違う自分になれるかもしれない。その為にバイクに乗ることを選んだ。そういう、何か自分に得るものがあるのでは?というのが基になっていると思う。
高校生の時には、ライダーとしての自分の可能性のようなものを想像し、雑誌を読んだり写真をファイルに挟んだり、バイク屋さんの店頭に並ぶ実車を見て心躍らせていた。
バイク選びがとても楽しかった。空想しながら過ごす楽しい時間にも価値があったような気がした。
実際にバイクを手にした時はどうだろう。価値は、物理的な価値。スペックやカスタムパーツなど、物理的なモノの価値が中心だった。パーツを変えたという分かり易い見た目の変化はあるけれど、果たしてそれが良い変化なのか悪い変化なのかについては、実際のところ分からなかった。
時に自分自身の感覚を麻痺させてしまい、実際には殆ど変化が無くても良くなったように思えた。分からない処は、雑誌に書いてある情報通りに違いないと思い込んでいた。
思い返すと、実体験では分からなかったことは知識で埋めて、分かったかの如く自分自身を納得させてしまっていた。それを繰り返している内に、バイクの魅力は徐々に色褪せてしまうように思えた。一時的には良かったのに、ライダーとしての私自身が変化しないから、バイクの持つ魅力が低下して行くように感じたのだろう。
いつかは大型バイクに乗りたくて
ある程度バイクを動かせるようになると、スピードを出すようになり、バイクを乗りこなしているように思えてくるから不思議だ。客観的にバイクに乗るのが上手くなったと思える指標が無いから、アクセルをワイドオープン出来たら上手くなったと思うしかなかったのだろう。今思えば危険な乗り方をしていたと思う。
大型バイクに乗ることは、学生時代に中免ライダーだった私にとっては憧れだった。当時は、自動二輪中型「限定」免許だったので、「限定解除」試験を受けて、限定されない一人前のライダーになるという意味があったからだ。
大型バイクは私にとって、一人前のライダーだと表現する為の乗り物だった。
実際に免許を取得して大型バイクのBMW R1100 GSに乗ると、今までに乗っていたブロス400やXLR250R とは、明らかに違う乗り味を体験出来たので、やっと一人前になれたという満足感があった。気持ちの面でも限定解除され、身の程を知らずにアクセルをワイドオープンして痛い目にも合った。
トレッキングごっこ
上手く乗れるようになりたくて、某有名インストラクターのライディングスクールに参加したのだが、大型バイクを上手く扱うことは出来なかった。少しずつ嫌気が差し始めた頃にNWJC高田さん流トレッキングごっこに参加するようになった。
それを契機に、ライテクよりも五感を活かした感性でバイクと会話することが朧気ながら分かるようになり、大型バイクに乗ることがとても楽しくなった。
飛騨のKamiさんはトレッキングごっこを続けられて、初のビッグオフ(タイガー955i)で林道へ入り意外にも乗れたことに同行した仲間たちも驚き、何故乗れたのか分からないが、トレッキングごっこの中にバイクを操る基本がすべて盛り込まれているように思うとのこと、同じような経験をされた方も数多くお見えになる。
トレッキングごっこは実に不思議なバイク遊びであることを私も実感している。ライダーとして成長し始めた自分に気付き、バイクが今まで以上に楽しくなると、思春期の中学生が人間としての自分の価値を模索するように、ライダーとしての自分の在り方を模索するようになった。
ツーリングライダーとして
ツーリングを楽しみ続けている内に、私はツーリングライダーなのだ、ということに気が付いた。知らず知らずの間に、ツーリングライダーとしてバイクを楽しむ道を歩いていたのだった。
ツーリングライダーとしてバイクの楽しみ方が確立されると、バイクの価値感が変わる。バイクに乗りバイクならではの旅があるということ、バイクは旅の相棒のような道具としてとても素敵な乗り物であるということ。バイクライフが徐々に拡がりを持つようになった。
ライダーとして成長していく中で、バイクに乗り、色々な体験を経て、自分自身にとっての価値を「見出す」ことが出来たのだ。
所有するだけではなく見出すこと
バイクの価値を、自らの経験の中で見出すことが出来たのは、とても幸運なことだった。ツーリングライダーとして経験豊富なバイク屋さんといつものメンバーに、ライダーとして成長させて頂いた、その有難さを実感している。
バイクに乗りたいなと思っていた学生時代に、無意識の中に描いていたライダー像が熟成され、ようやく形になったということだろう。
自分にとってのバイクの価値を見出すと事が出来なかったなら、学生時代と変わらず、今も雑誌やWebの情報をあさり、ライダー像を空想し続けていただろう。日毎にバイクの価値もライダーとしての自分の価値も褪せてしまい、空想から現実に引き戻されてバイクに乗るのを辞めていたかもしれない。
価値というものは、自分自身で見出さなければ、骨董品的な価値が付かない限り、徐々に目減りしていくものだと思う。
私がゴールドウイング適齢期を満喫しているのも、Kさんがアフリカツイン(一時的に心が離れかけていたけれど)をツーリング仕様へとバージョンアップさせるべく楽しんでいるのも、バイクの価値を見出せる環境にあるからだと思う。
見出された価値はプライスレスだから、これから先も褪せることなく、永く昇り続けるものだと思う。
バイクの楽しみ方の変化
ツーリング途中、高田さんやいつものメンバーと話していた時に、其々のバイクの楽しみ方がバイクに乗り始めた頃とは大きく変わってきたという話題となった。
バイクの楽しみ方は十人十色だが、カブ110 NWJCコンプリートで大らかな気持ちで悠々とツーリングを楽しんでいると、見える景色が変わってくる。
見える景色も違えば、バイクとの会話も変わってくる。最近のカブ・コンプリートやXR230との会話を思い返していると、ダウンサイジングしてバイクを楽しむと言うことは、気負わずにバイクに乗り続けて余すことなく使いこなせる人車一体の感覚を無意識に感じ取っていることに気付いた。
大排気量のバイクでは感じ取ることの出来ないものがあることを、体力勝負もテクニックも殆ど関係ない小排気量のバイクとの会話の中で実感したのだ。
バイクを操ることと旅としてのツーリングを楽しむことが一元化され、心身共に大らかに悠々とバイクツーリングを愉しめるようになって来たように思う。
このようにバイクライフを振り返る切っ掛けになったのは、今年の5月と7月に行ったツーリングで交わした高田さんやいつものメンバーとの会話だった。
次回はそのツーリングについて書こうと思う。
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